戦乙女が舞い降りた地で、

架空戦記
長編小説一作目、架空の世界を舞台にした戦争物の作品です。

プロローグ


 最新鋭戦艦「伊瀬」
 時は2017年、セレウベル海を最新鋭戦艦「伊瀬」が航行していた。

 現在、戦艦を所有しているのは我が国と合衆国くらいだ。この「伊瀬」は、今から70年以上も前に生起した第二次世界大戦の直前に二隻竣工した紫花(すみれ)級の五番艦である。戦艦という艦種が生まれたのはその戦争からさらに半世紀以上も前だったが紫花級戦艦のような近代的な艦様になったのはファメール皇国で建造されたドレッド・ノート級が最初であった。
 戦艦は、もともとは木造艦の両側の端に大砲を並べた戦列艦から端を発している。そこから装甲に鋼鉄版を貼るようになり、しだいに大型化していった大砲は両側の端に並べることが出来なくなって艦の縦方向の中心線上に並べるようになった。
 初期の戦艦は、中心線上に配された主砲のほかに艦の両端に同様の主砲や中型の大砲を乗せたりして大中小の大砲を混載していた。
 ドレットノートはそれまでの戦艦が搭載していた中型の大砲を廃し、敵戦艦用の主砲と水雷艇などの小型艦艇用の小型砲だけを搭載した画期的な戦艦だった。それに類する戦艦をその名前から「ド」級戦艦と名づけた。
 この「ド級」という言葉は、聞いたことがある方も多いであろう。もともとは戦艦に対して使っていた言葉が大衆に浸透していき、次第に「大きなもの」という意味で使われるようになったものである。
 その後も戦艦の発達は進み第一次世界大戦、通称「東方大陸戦争」で起こったマリアン沖海戦ではその当時最強だと謳われたファメール皇国の超ド級戦艦「クイーン・メリー」がセレバンテス帝国の旧式ド級戦艦部隊に撃沈されるという出来事があった。これより戦艦はさらに発達しマリアン沖海戦の戦訓を採用したポスト「マリアン」級戦艦を各国は建造した。
 ここで、各国は戦艦の建造競争をしたがそのなかでも白熱したのはルヴィアゼリッタ合衆国とセレバンテス帝国と霧城連邦皇国だった。ルヴィアゼリッタ合衆国は三年計画艦として戦艦十隻、巡洋戦艦六隻からなる総勢数百隻にも上る大艦隊建造計画を進めた。これに対抗しセレバンテス帝国は大海計画艦を霧城連邦皇国は八八艦隊計画艦の建造を進めた。
 しかし、ここでこれからの戦争の意向を左右する大きな出来事が起こった。それは、リッシュメル王国とガバメント王国のあいだに起こった小競り合いでリッシュメル王国の雷撃機(魚雷を搭載し、これで敵艦を攻撃する航空機。魚雷は、正式には魚形水雷と呼ばれ、航空機から投下された後はスクリュー推進で敵艦に向かって海面を進む)が軍港に停泊中の新鋭戦艦を一隻、撃沈させること成功したことである。
 これは世界的には、軍港に停泊していたせいもあり大きくは取り上げられなかった。
だが霧城連邦皇国はこれに目をつけ、戦艦は航空機でも撃沈できるという航空主兵主義の下、次世代航空機の研究を促進させた。
 皇国は戦艦の建造を遅延させてでもこの研究を支援した。なぜそうしたのかというと戦艦とは建造にコストがかかる。紫花級戦艦ならたった一隻建造するのに一億以上もするのだ。(これは当時の物価であり今の物価にすれば数千億。否、ものによっては数兆してもおかしくない代物だったのだ。)さらに維持費も膨大になるからだ。また、損傷を受け長期間の修理が必要な事態にでもなれば半年以上の間無力化されたも同然な状態にされてしまうのだ。これに対し航空機は、(航空機といっても戦闘機、攻撃機、爆撃機、偵察機などさまざまな種類があり、どれも製作コストが違って一様には言い切れない)とにかく圧倒的な機数を作れるのだ。これにより、第二次世界大戦時には世界各国の中で一番の航空戦力を保持することに成功したのだった。
 しかし、世界の国々では霧城連邦皇国を馬鹿にしていた。なにしろ、航空機、空母の量産には成功していたが戦艦は各国中最低の八隻しか保持していなかったのである。それも、半分は旧式の巡洋戦艦(防御を犠牲にすることで高速力を得た戦艦)。同盟国以外は霧城連邦など相手にもしていなかったのである。
 だが実際は違った。第二次世界大戦に参戦した際、霧城連邦の航空機は敵艦隊の猛烈な対空射撃を潜り抜け戦艦を易々と撃沈していったのである。その後、戦争に勝利した霧城連邦は身をもって航空機の威力を証明したのであった。
 さて、長々と話してきたが現在は最初に言ったとおり戦艦は完全に廃れてしまった。
すなわち、「伊瀬」はかつて戦艦が海戦の帰趨を左右していたころを思い出させる数少ないものとなったのである。
 その「伊瀬」であるが霧城連邦艦隊の旗艦を勤める予定である。今は、完全に無用の長物と化した戦艦であるがその巨艦は旗艦にはもってこいなのである。あと少しして紀伊軍港へ着いたら即刻連邦艦隊第一艦隊に編入される。
港に着いたら忙しくなるし、もうすぐ艦橋任務の交代時間だ。今はそれまで仮眠を取ることにしよう。
(このとき私は、まさかあんな事態になるとは夢にも思わなかった・・・・・・)

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